リンとカルシウムのはなし


ミルワームはヒメウズラも、アフリカヤマネもフクロモモンガもみんな大好きです。飼育していない他の鳥や小動物も、きっと大好きだと思います。特に活きミルワームへの反応は格別です。エンリッチメントや人慣れ練習、仲良くなるための貢物としては最高です。

でも、問題はリンの含有量。リンを多く含むのにカルシウムが少ないのです。活きているものはカルシウム:リン=1:25 、乾燥のもので、1:15~1:20です。理想は2:1なので、カルシウムが全く足りません。そこでブラックソルジャーフライの販売もしているのですが、なんでリンとカルシウムの比率が重要なの?と思われる方もあるかと思い、今回はそのおはなしです。

そもそもリンとカルシウムって何のために必要なの?


両方とも「骨の材料」!
骨の主成分は「リン酸カルシウム」という化合物。

この2つがバランスよく吸収されることで、丈夫な骨や歯、神経伝達、筋収縮が保たれています。

Ca:P比(カルシウム:リン比)は 2:1前後が理想とされています。つまり骨の健康・吸収バランスが最良ということです。

1:1以下(リン多め)だと、カルシウム吸収が妨げられ、骨がもろくなったり、くる病リスクが上がります。

5:1以上(カルシウム過剰) では、人間ではカルシウムが過剰に蓄積して腎臓や血管の石灰化リスクがあると言われていますが、小動物ではそこまで問題になりにくいようです。

ではリンが多すぎると何が起こるのでしょう

リンは「カルシウム泥棒」みたいな存在なんです。腸の中でリンがカルシウムとくっついて吸収を妨害します。その結果、カルシウム不足(=低カルシウム血症)となります。

体はこれを補うため、骨からカルシウムを引っ張り出し、その結果、骨がもろくなったり、変形したり、最悪の場合はくる病や骨折につながります。

ビタミンD3との関係
ここでもう一つ、重要なもにがあります。それはビタミンD3。カルシウム吸収にはD3が必須なのです。D3がないと、腸からCaがほとんど吸収されないためです。

だから、

D3不足はカルシウム不足を引き起こします。リン過多でも、吸収阻害でカルシウム不足になります。


例えばミルワームばかり与えてると…
Ca:P = 1:20 くらいで超リン過多

おやつ程度ならOKでも、主食や高頻度だと骨がスカスカになってしまいます。これは特に成長期/妊娠授乳中/老齢は影響が出やすいです。

Ca:Pの目安(安全な目標値)
Ca:P = 1.5:1 ~ 2.5:1 が理想。それで平均して2:1としています。

3:1以上でも問題はないけど、D3がないと効果が薄いのでバランスを見るときは、CaとPだけでなく、D3も忘れないようにしましょう。

リンは悪者ではないけれど、リンが多すぎるとカルシウムの味方に見せかけて、じわじわ吸収を邪魔する、ちょっと困った奴なんです。うちのフクモモの名前なので、お婿さんの名前をカルにしようかとも思ったのですが、微妙な相性になりそうだったので、テツにしました(笑)

フードを選ぶ時には成分もしっかりチェックしましょう。ペレットは一社のものだけではなく、数社を混ぜるとバランスがよいです。

フェアリーネストのアフリカヤマネのごはんでも数社のペレットをベースにしています。ちなみに、フクモモにはブラックソルジャーフライは有効ですが、粗繊維が多いのでアフリカヤマネには与えないようにしてください。アフリカヤマネのカルシウムは他のもので補っています。


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