猫の毛色と遺伝子
まず、三毛猫。
白・黒・茶(オレンジ)の三色の色をした猫のことです。

三毛猫の毛色のうち、黒と茶(オレンジ)は性染色体上にあります。
黒はo。茶はO。
大文字 O:優性(ドミナント)
→ オレンジ色(茶トラや茶系)になる遺伝子
小文字 o:劣性(レセッシブ)
→ 黒またはグレーなどの暗い色を発現させる遺伝子
だから、メスの三毛は Xᴼ Xᵒ。微妙ですが大文字Oと小文字oですw
ここにS遺伝子(白斑遺伝子)がさらに関与します。ちなみに、S遺伝子は常染色体上にあって性別に関係なく作用します。
それで三毛猫の出来上がり!
オスはXYだから、黒と茶が同時には発色しないんです。ただし、染色体異常の、たとえばXXY型のクラインフェルター症候群の場合は外見はオスで三毛猫になります。しかし、多くの場合は繁殖能力がありません。
ついでに、チャトラの話も。
チャトラは性染色体上のO遺伝子が関与しています。
茶色そのものは、X染色体上の「O(顕性)」遺伝子によって発現します。
顕性というのは昔、優性って言ってたものです。
オスなら:XᴼY
メスなら:XᴼXᴼ
・・・でもメスの茶トラは超少ないのです。
それに縞模様(タビー柄)に関与する別の遺伝子を持っています。
まず、猫の縞模様には、主に以下の3つのタビータイプがあります。
マッカレル(Mackerel)・・・細く縦縞が走る「サバトラ」 Taᴹ(顕性)
クラシック(Classic)・・・ 渦巻き模様「渦巻きトラ」 Taᶜ(潜性)
スポッテッド(Spotted)・・・ 斑点模様「ベンガルっぽい」 別の修飾遺伝子
茶色のベース(O遺伝子)に、タビー模様が乗って、チャトラの出来上がり!
なんでチャトラはオスが多いのかというと、X染色体が1個 XᴼY(オレンジ発現)でもチャトラになるのだけれど、メスじゃXᴼXᴼでないとチャトラにならない(つまり両親からOをもらわないとダメ)なのです。
その結果、茶トラの90%以上がオスというわけです。
猫の縞模様・・・タビー(tabby)パターンは、常染色体上の Ta遺伝子(またはT遺伝子とも)で決まります。
さきほど、縞の種類を書きましたが、もう少し詳しく説明してみます。
- キジトラ(ブラウン・マッカレル)
基本カラー:黒(o/o)
タビー遺伝子:マッカレル型(Taᴹ)
修飾遺伝子なし ・・・ 自然に「キジ」になります。
「キジ=野生型」で、最も原始的な猫模様だと考えられています。 - サバトラ(シルバー・マッカレル)
キジトラにそっくりだけど銀っぽい色
実は、「銀遺伝子(Inhibitor gene = I)」が入っています。
毛の根元の色素を抑えて「白」にする効果がある遺伝子です。
その上に黒縞が乗ると ・・・ サバトラの出来上がり!
つまり、キジトラ + 銀遺伝子 = サバトラ - アメショー模様(クラシックタビー)
遺伝型:Taᶜ / Taᶜ(劣性)
渦巻き(マーブル)模様になります。
アメリカンショートヘアで有名だから「アメショ模様」と呼ばれるけど、
実はこの遺伝子型、他の猫種でも見られます。
猫の模様は、上記に加えてさらに深い遺伝的調整があります。
Agouti遺伝子(A/a):模様があるかないか(タビーを出すか隠すか)
色遺伝子(B系・D系):色調の濃さ(黒/チョコレート/ブルーなど)
シルバー遺伝子(I):毛の根元の白化
ここまで書くと、全色書きたくなるので(笑)
まずはグレー一色。グレーはブルーと呼ばれることが多いですね。
ロシアンブルー、シャルトリュー、コラット、ブリティッシュブルーなど・・・。
これは「黒い毛を薄くする遺伝子(希釈遺伝子)=d遺伝子(ブルー因子)」によるものです。
B/b系:メラニン色素の種類(黒~チョコ)
B/B または B/b → 黒の色素をもつ
D/d系: 希釈(d:潜性)
d/d → 色が「薄く」なる
D/Dは黒で濃い色の遺伝子しかなく、D/dでも、Dが1つあるだけで黒になります(dは隠れる)。
d/d と、やっとdが2つそろってブルーが発現します。
白猫は・・・
実は 全部「色がない」のではなく、原因が違う3タイプがあります。
W遺伝子:真の白猫(顕性ホワイト)
W/_ で、真っ白です。ドミナントホワイトと呼ばれます。ドミナントとは顕性のこと。
Wは優性遺伝子で、これがあるとどんな毛色も完全に覆って「真っ白」になり、毛だけじゃなく、皮膚やヒゲの色も白っぽくなり、耳の内側の皮膚がピンク色に見えます。
ドミナントホワイト(W)は目の色素にも影響するから色が青、金、またはオッドアイになることが多く、耳の内側の皮膚がピンク色に見えます。
「真の白猫」は、この W遺伝子による「色のキャンセル効果」なんです。
W遺伝子が耳の内耳にあるメラノサイトにも影響すると、内耳が正常に発達しないことがあり、 片耳または両耳の先天性難聴につながります。
それで真っ白猫には難聴の子が時々いるんです。
目の色は、猫が赤ちゃんの頃、みんな青いですよね。キトンブルーって言って、可愛いのですが、あれはメラニン色素がまだ虹彩に沈着していない状態なんです。だから光が散乱して レイリー散乱(空が青く見えるのと同じ)で青く見えています。
キトンブルーは大人になると、違う色になってしまいますが、白猫のW遺伝子は毛色をすべて真っ白に塗りつぶす力を持つだけじゃなくメラニン細胞(メラノサイト)の移動や発達そのものを妨げる作用があるため、大人になっても、目が青かったり、オッドアイだったりするわけです。
青いほうの目にはメラニン細胞はほとんどなく、金色のほうには少しあるというわけです。
ところで、音の振動は耳の中の「蝸牛」という部分に届いて、その中にある「有毛細胞」が音を感じ取ることで「聴こえる」になるんですが、有毛細胞の正しい発達や機能維持には、メラノサイト(色素細胞)が必要なのです。
だから、白猫で青目の子に先天性難聴が多い・・・オッドアイの子も、青いほうの目側の耳が聞こえにくいことがあります(完全じゃないけど傾向アリ)。
W遺伝子による真の白猫以外にも、白斑遺伝子(S遺伝子)のせいで、白が多すぎるために偽の白猫もいます。
偽というのはわたしが勝手に呼んでいるだけですがw
SSだと広範囲に白(ほぼ全身)、Ssだと部分的に白(靴下・ハチワレなど)、ss 白なし(キジトラなど)です。
本来の色の上に白がたまたま多く入りすぎて全身白に見えるタイプで、よく見ると「耳にうっすら色がある」なんてこともあります。目は色素があるので、青くないことが多いです。
あと、あまり見かけはしませんが、アルビノ(チロシナーゼ遺伝子の突然変異)もいます。色素異常タイプで c/c 完全アルビノ。
ウサギやネズミのアルビノと同じで、メラニンを作る酵素(チロシナーゼ)が完全に機能しないので目が赤やピンクに見えます。
猫では滅多にいないです。
そうそう・・・・ここで、アビシニアンが出てこなかったですね。
アビシニアンの特徴的な毛色はティックドタビー(ticked tabby)と呼ばれます。
1本1本の毛に、複数の色のバンド(縞)が入ってる毛色で、全体として模様がないように見えるけれど、実は「超細かい縞模様」です。
このティックド(agouti)毛はどう決まるかというと、
Agouti遺伝子(A/a)が関与しています。
Aが 表に模様が出る(タビー)顕性で、a がソリッド(単色で模様が出ない) 。
これにタビー遺伝子(Ta)が加わって、 通常のタビー(縞)を作ります。
でもアビシニアンには修飾遺伝子が働いててタビー模様が極端に細かく分解されるわけです。1本の毛に「バンド模様」ができて、見た目には模様がほとんど見えないティックドタビーとなります。
つまり、アビシニアンの発色は・・・Agouti遺伝子 A/_ で模様が出(非ソリッド)、タビー遺伝子が修飾して通常の縞を壊して細かくする。
これに色素遺伝子 rufous系が赤み(ルフォス因子)を強め、希釈遺伝子 D/D or D/d で濃い色(ブルー系でない)を出します。
アビの公認カラーは、以下の4つ。
ルディ(ruddy): オレンジ×黒の基本色(赤茶)
レッド(sorrel): 明るい茶(チョコレート系)
ブルー(blue) :灰色系
フォーン(fawn): ベージュ系(ブルーの薄い版)