アフリカヤマネが野性下で何を食べているのかの調査文献には、一般的に果実、ナッツ、無脊椎動物、鳥の卵、時には他の小型脊椎動物を食べる雑食性であると書かれていました。さらに、ヤマネ科に共通する重要な生理学的特徴として、盲腸(Cecum)がないことを忘れててはいけません。盲腸は他の多くの齧歯類において植物繊維の発酵に使われる器官です。それがないということは、繊維質の多い植物質を消化する能力が極めて低いということになります。
フェアリーネストではアフリカヤマネのごはんを研究しています。OEMで製造をする選択肢もありますが、それより既製品のフードを適切にブレンドするほうが安全で安定した品質を保持できると考えてブレンドしています。
タンパク質
タンパク質は、一般的なハムスターフードよりも高いレベルであることが必要です。専用フードがない以上は、単一のペレットに頼るのではなく、多様な動物性タンパク質を供給することが、重要であると考えています。
脂質
エネルギー源として、また脂溶性ビタミンの吸収に不可欠です。必須脂肪酸の供給源でもありますが、過剰摂取は肥満につながるため、バランスが重要です。特にヒマワリの種などは脂肪分が多いため、与えすぎには注意が必要です。
炭水化物
主なエネルギー源であり、果物、蜜の代替品、限定的な穀物や種子から供給できます。繊維質の消化能力が低いため、複雑な炭水化物よりも消化しやすい単純な糖質が主体となります。
繊維質
盲腸がないため、繊維質の消化能力は極めて低いのですが、腸の蠕動運動のためにはある程度の繊維質が必要です。ただし、過剰な繊維は消化されずに消化器系の負担となります。ハムスターやウサギ用の高繊維食とは対照的に、低繊維であることが必須です。フェアリーネストでは粗繊維の上限を設けてブレンドをしています。
微量栄養素
ビタミン: 果物やバランスの取れたペレット、多様な副食を通じて、幅広いビタミンを摂取する必要があります。特にビタミンDはカルシウムの吸収に不可欠であり、代謝性骨疾患(MBD)の予防に関連します。
ミネラル(カルシウムとリン): 骨の健康を維持し、代謝性骨疾患(MBD)を予防するために、カルシウム(Ca)とリン(P)のバランスが極めて重要です。理想的なCa:P比に沿ってブレンドしています。
ゼリー
ゼリーは水分補給にもなり、ビタミンやカルシウムなどの栄養強化がされているものもあるので便利です。与える頻度はおやつ程度と考え、週に1〜2回を目安に少量を与えるのが良いでしょう。ただし、ゼリーは糖分が多いため、与えすぎると肥満や消化不良の原因になります。
また、アフリカヤマネに与えても良いゼリーはペット用のゼリーや、果汁を固めただけのものが比較的安心です。
新鮮な水
ゼリーを与えているから・・・果物を与えているから・・・水を置くとこぼすから、汚すから・・・と水を与えていない方がいますが、水は必須です。給水器から飲めるかどうかをブリーダーさんから確認して、できれば吸水器から水を飲める子をお迎えするようにするとよいでしょう。
フェアリーネストでは、置き水は汚れたりこぼしたりするほか、中に落ちて濡れてしまって体温が奪われるなどの危険を避けるため、必ず吸水器で水を飲めるようにしています。
どうしても吸水器で飲めない子には、鳥用の「小鳥タンク」を使って、さらに毎日洗って水を交換してください。
エンリッチメントと人慣れのためのおやつ
アフリカヤマネ飼育でまず注意しなければならないことは「逃亡」です。このことは別のコラムに書いてありますので、ここでは省略します。
逃亡させないために、ケージの奥に巣箱や台を置き、彼らがその奥に隠れつつ、おやつを渡せるようなレイアウトを作ります。
入口は腕が入るだけ開け、ミルワームを与えます。生きた虫がとにかく大好物です。手から受け取るようになったら手のひらに置いて差し出していると、やがて、手の上に乗って食べるようになります。
生きたミルワームに触れない!という場合は、乾燥したものでもかまいません。フェアリーネストの「アフリカヤマネのごはん」では、ミルワームを別にしてありますので、それをお使いください。手渡しはしない、あるいは手渡しは活きたものを渡せる場合は、最初によく混ぜてください。
虫や一部の種子のようにリンが高い食品を多く与えると、カルシウムの吸収が阻害される可能性があります。おやつに活きたミルワームを与える場合でも、理想的なCa:P比となるように「アフリカヤマネのごはん」にはカルシウムパウダーを加えてあります。
個体による嗜好性の違い
人間にも食べ物の好き嫌いがあるように、アフリカヤマネにも個体による嗜好性の違いがあります。彼らはきちんと「気に入らないモノ」を残します。餌は必ず毎日食べきれるくらいの量だけ入れて、同じモノが残っている場合、それは捨ててください。継ぎ足ししていくと、気に入らないモノだけが残り、長期にわたってそれが残っていることは不衛生です。
なお、「うちの子は〇〇だけ残す」というようなご連絡をいただければ、栄養価を計算した上で口に合うブレンドにしますので、ご相談ください。